中森明菜 北ウイング&ドラマティック・エアポート
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 Published On Dec 31, 2021

Love is the Mystery ~ 君のもとへ ~

明菜は1人空港に立っていた。
外に目をやると、翼をひろげた機体が静かにその時をまっている様であった。
やがて搭乗開始を知らせるアナウンスが流れ、搭乗を始める乗客達。
いかにも新婚らしいカップルやビジネスマン。
楽しそうに会話をしながら乗り込む家族連れ。
そんな乗客達に紛れて、明菜も1人乗り込んだ。
座席につくとシートベルトを締め静かに目を閉じた。
暫くすると、機体はゆっくり動き始めた。
北ウイングを離れ滑走路を目指す。
離陸を知らせるアナウンスが流れ、大きな機体を押し出す様にエンジンが唸りはじめた。
徐々に速度を上げた機体は、滑走路を離れ夜の空へと飛び立った。
窓の外に小さくなってゆく街の明かりを見下ろしてみる。
「一度は諦めたはずなのに···」
やがで機体は、日付変更線を越えてゆく。
光る海を越え、明菜を乗せた機体は夜間飛行で霧の街を目指す。
一度は諦らめたはずの彼の元へ。
まるで映画の主人公の様だと、ふと思った。
小さな窓の外には、真っ白な雲がまるで絨毯の様に広がっている。
「この雲の下に彼の住む街が···」
そんな事を考えていると、着陸の為、降下を開始するアナウンスが機内に流れた。
グングン高度を下げていく機体。
雲の絨毯を抜けると、そこは染み渡った綺麗な青空だった。眼下には、まるでミニチュアの様な街が広がっていた。
ミニチュアだった街がどんどん近づいてくると、いつも見る大きな街へと変化してきた。
大地が近づいてくる。まもなく着陸だ。
彼の住む霧の街が明菜を優しく迎え入れてくれた。
その優しさが明菜の不安な気持ちを和らげてくれる様だった。
明菜は決めていた。
彼の胸に飛び込むと···
思いを告げた明菜は1人帰国した。
そんな明菜の元へ彼から一通のエアメールが届いた。
懐かしい文字に目をやってみる。
「明菜へ」···
そこには、明菜への想いが綴られていた。
そして帰国することも。

ついにその日はやってきた。
彼が帰国する日だ。
明菜は車に乗り込むと霧雨降る首都高を空港へと走らせた。
彼と離れて苦しかった日々が走馬灯の様に明菜の頭をよぎっていく。
雨で濡れた滑走路を見つめていると、彼を乗せた機体が翼を傾け、ゆっくりと近づいてくるのが視界に入った。と同時に視界がボヤけ始めた。「雨のせいかな?···」と思ったが、それは自分の涙だと気付くのに、それ程時間はかからなかった。一粒の涙が明菜の頬をつたう。
彼を乗せた便の到着を知らせるアナウンスが流れた。
暫くすると大きなスーツケースを押した乗客達が次々とゲートから出てきた。
そんな乗客達の中に彼の横顔を明菜は見逃すはずはなかった。
自然と彼の元へと走りだす。
人混みを掻き分けながら、彼の元へ辿り着いた明菜は抱き付く様に彼の胸に飛び込んだ。
彼は明菜を優しく受け止めて強く抱き締めた。
        - END -

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